ダークウェブ・アンダーグラウンド / 木澤佐登志

  • 読了日: 2022/09/03
  • 出版日: 2019/01/20

まとめ

Tor上に広がるダークウェブの話を、理念や暗号化の話を踏まえて説明している。RSAPGPの話があるのは好印象。

ディープウェブ以下のコンテンツは認証などを必要としてパブリックアクセスできないので、全ての情報を握ろうとしたgoogleも、結局インターネットコンテンツ全体の4%程しか握れなかったらしい。案外少ない。

第3章に赤い部屋の話がある。これ、ただのFlash作品きと思ってたけど元々都市伝説だったのか。

クマーのAA、海外ネットではペドフィリアの文脈を帯びているのか…

なるほど日本のネットは思想が薄いのか。思想が薄いからあくまで「悪趣味テイスト」程度に留まっている。そして「この情報・データを共有して思想を広めなければならない」という必死さもないからシェアの精神は芽生えず、タダ乗りが多い。これは日本人が独立によって自分たちの権利を勝ち取ったことがない、ということが原因かもしれない。

ニックランド辺りの話しはあんまりダークウェブ関係なくなっている。

第6章にあるブロックチェーン周りの記述は興味深い。しっかりと暗号通貨以外の地に足着いた用途についても述べられている。

「この宇宙が現実であるか巨大コンピュータによるシミュレーションであるか、確かめる手段は究極的にはない。」こういう思考実験、ありがちだけどやっぱ楽しい。

感想

主に海外のアンダーグラウンドなインターネット周りの文化や思想が書かれた本。技術的な話にも多少踏み込んでおり好感度は高い。

思想のあるインターネット、合う人達で集まると居心地がよいのだろうな。だから問題が起こる、というのはあるけど。

2022年8月読んだ本

  • [ビジネス?] 先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち
  • [漫画] 渡くんの××が崩壊寸前
  • [漫画] ミューズの真髄
  • [漫画] 光が死んだ夏
  • [小説] 機龍警察 [完全版]
  • [漫画] 日本国召喚

感想

最近全然読んでない。趣味だしいいんだけどせめて週1冊くらいは目を通したいなという気持ち。漫画も買うのを躊躇しがちになってる。

もくもく温泉開発合宿2022夏の部 in 土善旅館

また行ってきた。ちょっとだけこの合宿の紹介と感想を書く。

なんの会?

connpassで募集してある野良の開発合宿です。今回でもう17回目になっているみたいです。

mokumoku-onsen.connpass.com

やることは人に迷惑をかけない限り完全に自由です。開発合宿と銘打ちながらずっと本読んだり寝たりしてる人もいます。

どんな人たちがいるの?

ソフトウェアエンジニア職の人が多いです。今回は初めての人はいませんでしたが、以前何度か参加していた会では割とはじめましての人もいました。学生枠もあってたまに学生さんも参加してくれています。ゴールドスポンサー枠の人はなんとかっこいい大人が宿泊代を出してくれます。

合宿中どんなことしてるの?

楽譜の打ち込みしてる人、寝てる人、酒を飲んでいる人、paizaを解いている人、談笑している人、本を読んでいる人、アプリ作ってる人、Go言語でファミコンエミュレーターを作ってる人、いろいろな活動をしている人がいました。各々やりたいようにやりたいことをやってました。

土善旅館

会場は千葉県香取郡にある土善旅館という旅館です。東京駅から高速バスで90分片道2200円の場所にあります。

開発合宿プランだけじゃなくて、原稿合宿プランもあってコミケの締切前なんかは利用する人も多そうです。

www.dozenryokan.com

玄関口の様子

開発中の様子。汚い。すまねえ。

今回はプロジェクターでボリス・ブレッチャという人のクラブミュージックが流れがちでした。

ブース

今回ちょっとしたブースを作ろうというアクティビティがありました。

ここのブースに来ると雑談とどら焼きが食べられます。ワイワイしてました。

ご飯

美味しいご飯がたくさん出ます。

初日の夕ご飯

二日目のあさげ

二日目の夜ご飯

三日目の朝食

三日目の昼食

おいしかった。

私がやったこと

  • Scalaでpaiza解いて遊んだ
  • Flutterでアプリ書いて遊んだ

割と捗ってよかった。

まとめ

楽しかった。パブリックな合宿なのでみんなきて。

2022年6月読んだ本

  • [教養] 民主主義のつくり方
  • [小説] ファーストラブ
  • [教養] 言語学者、外の世界へ羽ばたく
  • [漫画] 29歳独身中堅冒険者の日常(13)
  • [漫画] ハコヅメ~交番女子の逆襲~(21)
  • [教養] 「読む」って、どんなこと? NHK出版 学びのきほん
  • [教養] 承認をめぐる病
  • [漫画] 天空の扉 17

民主主義のつくり方 / 宇野重規

asmsuechan.hatenablog.com

ファーストラブ / 島本 理生

asmsuechan.hatenablog.com

言語学者、外の世界へ羽ばたく / 川原繁人

asmsuechan.hatenablog.com

承認をめぐる病 / 斎藤環

承認の話は冒頭30%くらいで終わる。ので作者のファンだったり専門が被っているとかじゃなければ冒頭の30%だけでいいかもしれない。

現代の若者はマズローの5大欲求のピラミッドが崩れてきている、という話。承認欲求がより上位に来ており順番の入れ替わりが発生している、とのこと。そしてその承認は自分自身の特性で受けるものではなく、属している集団内における「キャラ」が受けるものであるとされている。この話がエヴァにたとえてうまく説明されている。この部分だけは繰り返し読む価値がある。

あとは最近のうつ病の傾向とかアダルトチルドレンの話とか。少し身に覚えがあるところもあり、読んでいて心苦しくはあった。

この本を読んでいるとき、ちょうど以下の記事を見つけた。

blog.tinect.jp

中盤以降は精神医学・精神病理学の話に終始しているので期待した内容ではなかった。

感想

バタついていたのであんまり読まなかった月。

今月のザ・ベストは特になし。強いて言えば「言語学者、外の世界へ羽ばたく」

Kindleがアプリで購入できなくなったの、思ったよりも不便。

言語学者、外の世界へ羽ばたく / 川原繁人

  • 読了日: 2022/06/16
  • 出版日: 2022/04/28

まとめ

ポケモン言語学を研究している先生が書いた本。内容は授業の話、ヒップホップの話、他者との繋がりの話、ポケモン言語学の話、統計・機械学習の話など多岐にわたっており、冒頭も書かれているように「私的な視点から書いた」本になっている。

話題が多岐にわたっているので言語学を知っている人しか分からないようなことはないのだが、その代わりに読むには研究活動を始めとした研究者としての背景知識が必要になってくる。大学院で真面目に研究をしていたことのある人であれば著者の言っている内容はよく理解できるだろうし、自分はこうして院生時代が過去のものとなった今ではなく修士の現役時代に読みたかった本だと感じる。

内容は https://la-kentei.com/kotoba_news/?category=7 この辺りの記事や著者の授業をまとめたものとなっていて、オープンになっている部分が多い。

例: YouTubeチャンネル: 川原繁人の音声学入門(基礎編)

本書では繰り返し「制約は創造の母である」というフレーズが著者の実体験と共に書かれていて、特にコロナ禍での研究・教育活動の創意工夫が強調されている。

言語学的な話でも気になる内容はいくつかあって、例えば「日本語は英語より優れている」のように言語に優劣をつけるようなラベリングをするとその話者に対する差別につながる、など読んでいて確かになと思った。

感想

この先生の授業を受けているような感覚になる本だった。普段学生を教えているというのもあって、読者との距離が近いような印象。いい先生なんだろうな、って。一度話してみたくもある。

新しい分野を開拓していく様子が描かれているのがとても面白く、真面目で堅苦しいよりも冗談が分ったりユーモアがあったりする方が魅力的に見えるんだろうな、との思いを抱いた。今現在切り拓かれている分野の研究は本当に楽しそう。

自分は日本語を含んだ自然言語が好きであって言語学は今まで全然触れてこなかったが、ランダムフォレストなど知ってるデータ分析手法が出てきてこういう分野にこそ自分みたいな人間が突っ込んでいくと楽しいのかもしれないと少し思った。

ファーストラブ / 島本 理生

  • 読了日: 2022/06/15
  • 出版日: 2020/02/05

第159回直木賞受賞作。

ざっくりあらすじ

臨床心理士の由紀と弁護士の迦葉(かしょう)が父親を殺した女子大生に向き合いながら自分たちの過去も解していくストーリー。登場人物の仕事柄ロジカルに感情や心理を説明しやすく、客観的な心理描写にしっかり筋が通っている。

感想

メンヘラの解像度が高い。ドロドロした感情が見えるやつは好きだけどメンヘラムーブを客観視して冷静に分析するやつはあまり得意ではない。

読んで最初の方で「父親から性的虐待を受けていそう」と思ったが、やはりそうであった。直接的な性的虐待ではなかったけど。

読んでいてすごく女の人が書いた話というのが分かりやすかった。「思い描く大人の女の恋愛」みたいなテンプレートを感じた。なんなら少女漫画のような感覚も読んでいて少しあり、出てくる2人の男(迦葉と我聞さん)はカードキャプターさくらのお兄ちゃんと雪兎さんみたいなキャラクターの立ち位置と重なる部分はあるなと思った。男だけは少女漫画に出てくるキャラクターみたいで女は解像度の高い現実の人間。

女の人の悪いところを全部描いたような本で、男はほとんど記号としてしか描かれていないように思える。このところも少女漫画みを感じる感じる点の一つ。

キャラクターについて特に言及すると、環奈を見ていると「私が悪かった」と言うことで他の人の同情を買おうとしているように感じる。被害者面あるある。自分が悪いことにしてすごく反省している素振りを見せれば「これだけ私は悪いと思っているのに許してくれないやつ」というレッテルを貼ることができる。相手と精神的に優位に立とうとする振る舞いだろうか。自分も女の人にこの振る舞いをされたことがあるので解像度の高さを感じた。

と、悪いように書いているけれども小説としては面白かった。面白い小説でなければこれほど感想は書かない。この作品が自分の好みであるかと問われると少し微妙だが、同年代の女の人には勧められる本のように思う。

民主主義のつくり方 / 宇野重規

  • 読了日: 2022/06/09
  • 出版日: 2013/10/15

結局どうやって民主主義をつくるの?

民主主義と言えば一般市民の意志を政治に反映させるもの。しかしそもそもこういう民意っていうのは最初から固まっているものではないことが多い。むしろ行動から始めてゴール地点に辿り着いた段階で「あ、これが自分の意志だったんだ」と感じることもままある。

つまり、「これで社会(大なり小なりあるけども)が良くなる」と思って行動する個人が増えていくと理想の?民主主義社会をつくれるということになる。

この行動を考えるにあたってプラグマティズムが重要になってくる。行動というか習慣。結果を考えてから実践、ではなくとりあえず行動してその結果で考える、がプラグマティズムのざっくりした理解。

この行動の例として、日本の若者による地域復興の話がされている。

「民主主義的に話し合いで決めよう。そして多数決しよう。」ではなく「とりあえずやってみます」で行動してからその結果を元に考える。というのが理想かもしれない。

感想

文章が分かりにくい。平易ではない。

たまに話がやたらと広がることがある。広がりすぎて言いたいことが分かりにくくなる。

結論を言う前にダラダラ説明している部分が多い。つまり結論が見えている人にはよく分かる本なのかもしれない。分かる人が分かる人に書いた本。

自分の知識が不足していて解像度が低いだけの話ではある。パースさんが出てきたあたりがちょっとキツかった。

中盤がしんどいけど最後まで読みすすめるとなんとなく分かるようにはなる。