内定童貞 / 中川淳一郎

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何か装丁がキラキラ光ってて目についたから購入。

読みながら書いた感想等をちょっとまとめたやつの放流。

感想

就職業界の仕事をしている人間は立場があるからリアルなことは書きにくいので全然関係ない中川淳一郎が好き勝手言ってみよう、という本。まえがきでやたらとこの本を書いている背景が書かれていて、「あっこれ炎上対策の予防線だ」って思った。就活と言えばこの前までしていたので今のうちに読んでおくか、と思い手に取った。就職する前と就職してからだと読んだ時に受ける印象は違いそう。

書かれている内容を簡単にまとめると、就活生は自己PRなどの就活準備なんてせずに面接は面接官の質問に対して素直に思ったことを答えればよいということ。これに関しては、嘘をいくらでも並べられる自己PRや志望動機には全然意味を感じないし、紋切り型の応答をするだけの事前準備大会は双方楽しくないと思う。面接に関しても、全部本音を言えばいいから面接練習というのも別にしなくていいと思っている。すぐ答えが出なければ面接官とコミュニケーション取りながら答えを落とし込んでいく。だから書類では例えば「人生で一番嬉しかったこと」のように思い出すのに時間がかかるようなことを尋ねてもらって、面接では口頭でもスラスラ出てきそうな「小さい頃からこれまでどういうことをやってきたか順に話してください」みたいな思い出しやすくて盛り上がりやすいトピックにしてほしい。面接がただの事前準備大会になるのは不毛。とか考えていたら文章中でほぼ同じことを言っていた。

「社会人の知り合いと酒を飲むことが重要」と書かれているけど、本当にそう思う。これをやると年上の人とワイワイ話すスキルが身につくし、業界の知識も感覚的に分かるようになる。こういうの繰り返せば年上の人と馬鹿みたいに笑いながら楽しく談笑できるようになる。なんか微妙なボールが来てもなんとか繋げて会話を成り立たせることもできるようになる。こういう経験が就活準備になるんだろうなあ。

この本が出版されたのが2015年でもう5年以上経つけど、恐らく就活事情は当時とだいぶ変化していて私が観測する範囲だと学校歴よりも個人の能力を重視する風潮が強くなっている。そこまで学校差別を感じなくなった気がする。気の持ちようなだけかもしれないけど。また、志望動機不要論もかなり現実的に意識されてきたような気がする。といっても就活は業界ごとにスタンダードが変わるみたいなので、Webの開発界隈ではそう感じたというだけ。

この本を読んでいて、序盤は同意する点が大いにあったが中盤以降を読み進めるにつれてよく分からない自分アピールが挟まってくるなどして、この本は「俺すげえ」を言いたかっただけの本なのではないかと感じた。読み終わってみて、あくまでこの本は中川淳一郎が経験した就活関連の経験から感じたことを煽り気味に書いてみた」っていうだけで大層なものでは無かったように思う。かなり特定の意見がさも一般的かのように書かれている。よく考えたらこの本の著者もいい大学の人間だから書いてある内容も就職活動を一般化できるような話でもなさそう。あたかも就活に関する現実を反映しているかのように書かれているが、そもそも筆者が有名企業しか受けてない時点でこの本は就活カースト上位の人間だけの現実であると思う。人事側としての就活の例もOB訪問ばかりだし、「上位10%の大学生に送る」のような文言が強調されていなければならないと思う。読んでいて「嘘は言っていないが本当のことも言っていない」という嘘つきの気配を感じていたが、上記のこともその一因ではありそう。この本、就活終わった人間が頷きながら読む本で、就活中の人たちは今までやってきた就活準備を否定された気持ちになって都合が悪いので大事な部分は目に入らなさそう。

やっぱ正直と誠実が最大の武器