グラスホッパー / 伊坂幸太郎

  • 読了日: 2022/05/10
  • 出版日: 2008/02/01

あらすじ

恋人を飲酒運転事故で殺された鈴木、殺した人の幻覚が見える殺し屋の鯨、操り人形のように言われるがまま人を殺す蝉、の3人の視点で話は進む。

恋人を飲酒運転で殺された鈴木は復讐のために犯人の父親が経営する非合法な会社に入社した。しかし犯人は押し屋に押されて轢き殺されてしまった。この鈴木が追った押し屋は槿という、只者ではない雰囲気を纏った男だった。槿は家族4人で暮らしており、鈴木には槿が悪人であると思えず組織への報告を拒否してしまう。

組織は鈴木を拉致し拷問して槿の居場所を吐かせようとするが、そこには殺した人の幻覚が見える殺し屋の鯨と操り人形のように言われるがまま人を殺す蝉が向かっていた。

感想

場面や行動の描写が多く、内面描写が少ない。確かに読みやすいしストーリーのうまさは感服するのだが、リアルな人間のドロドロとした内面を描写しているわけではないので物足りなさを感じた。

途中まで読んで、小説を読んでいるというよりかは映画を見ている時に近い感覚ことに気づいた。確かに伊坂幸太郎作品は映画がヒットするし面白い。描写の細かさが脚本に近いのかもしれない。

殺人者がメインに据えられている作品なのに人が死ぬ描写がやたらあっさりしていることがとても気になった。生き物はちょっとやそっとじゃ死ななくて、腹刺されたくらいだったら1分は反撃することができるという点が考慮されていない。このあっさりさも読みやすく一般人ウケする、つまりヒットしやすい作品の特徴なのかもしれない。個人的には最終的に登場人物全員死んで欲しかった。

復讐やら人殺しやら組織やら、ガンダムからロボ要素抜いて薄めたみたいなストーリーだな、と。以前(と言っても10年程前)は伊坂幸太郎作品をたまに読んでいて嫌いではなかったが、今は趣向が変わった模様。