ファーストラブ / 島本 理生

  • 読了日: 2022/06/15
  • 出版日: 2020/02/05

第159回直木賞受賞作。

ざっくりあらすじ

臨床心理士の由紀と弁護士の迦葉(かしょう)が父親を殺した女子大生に向き合いながら自分たちの過去も解していくストーリー。登場人物の仕事柄ロジカルに感情や心理を説明しやすく、客観的な心理描写にしっかり筋が通っている。

感想

メンヘラの解像度が高い。ドロドロした感情が見えるやつは好きだけどメンヘラムーブを客観視して冷静に分析するやつはあまり得意ではない。

読んで最初の方で「父親から性的虐待を受けていそう」と思ったが、やはりそうであった。直接的な性的虐待ではなかったけど。

読んでいてすごく女の人が書いた話というのが分かりやすかった。「思い描く大人の女の恋愛」みたいなテンプレートを感じた。なんなら少女漫画のような感覚も読んでいて少しあり、出てくる2人の男(迦葉と我聞さん)はカードキャプターさくらのお兄ちゃんと雪兎さんみたいなキャラクターの立ち位置と重なる部分はあるなと思った。男だけは少女漫画に出てくるキャラクターみたいで女は解像度の高い現実の人間。

女の人の悪いところを全部描いたような本で、男はほとんど記号としてしか描かれていないように思える。このところも少女漫画みを感じる感じる点の一つ。

キャラクターについて特に言及すると、環奈を見ていると「私が悪かった」と言うことで他の人の同情を買おうとしているように感じる。被害者面あるある。自分が悪いことにしてすごく反省している素振りを見せれば「これだけ私は悪いと思っているのに許してくれないやつ」というレッテルを貼ることができる。相手と精神的に優位に立とうとする振る舞いだろうか。自分も女の人にこの振る舞いをされたことがあるので解像度の高さを感じた。

と、悪いように書いているけれども小説としては面白かった。面白い小説でなければこれほど感想は書かない。この作品が自分の好みであるかと問われると少し微妙だが、自分の知り合いのうち「普通の女の人」とカテゴライズされる人たちには勧められる本のように思う。