家族八景 / 筒井康隆
あらすじ
人の心を読める、つまりテレパスである火田七瀬(19歳)が人の心を読めることは隠してお手伝いさんとしていろんな家庭を点々とする話。登場する家族は全て歪んでおり、不和を抱えている。
登場人物はほとんどが醜悪な欲にまみれて生きており、七瀬がその思考を読み取り観察するさまがモノローグで描かれている。観察はとても筋道だっており、テレパスという特性上これまでに人間の内面にフォーカスしてきているため、人間の描写に関してとても解像度が高い。この描写力の高さはさすが筒井康隆。
感想など
色褪せない作品。人生でもトップクラスに好きかもしれない。発行されたのが昭和50年らしいのでもう50年も経っているのか。
この作品は10年前、つまり高校時代にも何度か読んでいるのだが感想は当時とあまり変わらず「人間の内面描写が上手い」「文章が読みやすい」など。この10年いろんな経験したはずだけど変わらない読み方で読んだように思う。もしかすると私の読解力はもう10年ほど変化していないのかもしれない。むしろ劣化した可能性はある。
高校時代に読んだ時は確かマザコン息子の話がなぜかやたらと頭に残っていたように記憶している。ラストに人を生きたまま火葬してしまうというショッキングさがイメージとして焼き付いたのかもしれない。
人が死ぬ瞬間を七瀬が感じ取っている瞬間が印象に残る。
高校時代に三部作を全部読んだんだけど、時間の経過も意識されているしラストも好きな終わり方だったので本当に名作。やはりこういう小説はスラスラ読めてしまう。