〔少女庭国〕/ 矢部 嵩

あらすじ

卒業式に向かう廊下を歩いていルト意識を失い、気づいたらドア2つと貼り紙のある他に何もない部屋に寝かされていた。貼り紙には「ドアを開けた部屋の数 - 死んだ卒業生の数 = 1となるよう人数調整せよ」と記されていた。つまり最後の1人になるまで卒業生の人数を減らさなければならない。部屋にある2つのドアのうち一方は開かず、もう一方は開く。開く方のドアを開けるとそこには面識のない女子生徒が眠っている。ドアは無限に続いており、誰一人として面識のある者はいない。無限に続く女子のみの卒業生たちはどのようにして未来を手にするのか。

感想

読むのは2回目。こういう思考実験的な話は結構好き。石の部屋の中に閉じ込められているのだけど、窓がない室内に閉じ込められたら早々に発狂しそう。

現実のものと捉えるよりも、人間がコンピューターシミュレーション上で精緻な実験をしている様子と思う方が辻褄が合う。実際、文章もレポートのような文体であり、誰かに提出するようなものに思える。

無限に続く1枚岩、扉をトリガーに時間が動き出す卒業生、どこからともなく照り続ける光、必ず子がつく名前。これらはどこかコンピューター的で、自然物を感じない。作り出された3D空間で演算されている、と思うとしっくりくる。

酸素はなぜ供給されているのだろうか。数億年経つと木も生えるものなのだろうか。水はどうやって入手しているのだろうか。疑問は尽きないし人間世界でないと考えた方がやはり自然か。

高度に発展した世代では、覚醒した人間の教育はどうやっているのだろうか?明らかに最初は受け入れ難いものだと思うのだが、どのタイミングで現状が受け入れられるのだろうか。内部で生まれるのであれば、最初からそういう常識であると教育すればいいのだが、目が覚めるパターンだとまずは常識を入れ替えるところから始まるので大変そう。と、思っていたらちゃんと記述があった。「体験による洗脳」とのこと。なるほど。

物語全体にどうしようもない閉塞感があった。これは卒業生の扉は永遠に続くこと、解放された後の描写はないことなどから感じられた。変に脱出後の様子が書かれていないことはとても点数が高い。