本日は、お日柄もよく / 原田マハ

まとめ

主人公二ノ宮こと葉が偶然知り合ったスピーチライターの久遠久美に見初められて駆け出しスピーチライターになる話。

感想

あたかも鳥の雛のように、チャンスという餌が与えられるのを口を開けてただ待っているだけの主人公に偶然餌を投げ込む親鳥が現れたような物語。主人公は強い夢や好きなことがあるわけでも努力をしているわけでもないが、なぜか成果を出していく。偶然強者に見初められて自分も成功した、というシンデレラストーリーに近い。もちろん努力シーンなどはほとんどない。このような"努力嫌い"な表現は異世界転生系を例として、最近のブームであるという印象がある。努力は最小限でお手軽に結果だけを得て成功する物語が読みたいという世間のニーズを感じる。

また、一貫して主人公は自分の選択がなく、ただ流されているだけである。自分で未来を切り開いているような話では決してない。恐らくこの主人公の感覚は一般的な人間の感覚に近いものであると感じている。ストイックな努力をする人、好きなものがある人、なんて実際ほとんどいない。原田マハはきっとそれを分かって大多数の読者に"夢を見せようと"いう意図でこの話を書いたのでは?と思う。特にスピーチライターという"なんかかっこいい"専門職への憧れなんかもあってよくハマっているのではないか。

努力も好きもなく都合のいい成功だけを欲しがる一般人に向けた本。正直あまり好きではない。努力と選択と失敗は成功するには必須なのに、これら全部が省かれてインスタントに成果を得る物語なため。