ぼくが一番電子カルテをうまく使えるんだ! / 内藤孝司

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読んでる時に書いた感想を若干まとめたものの放流。

医療用語全然知らないけど文脈からも類推できなかった単語はレセコン、シェーマ、シュライバーの3つしかなかったので医療知識の少なさは読む妨げにならなかった。

感想

名古屋の近くにある、来院者は1日平均180-200人の耳鼻咽喉科医院の院長さんの本。設備投資への理解はあって開院後に電話予約装置や高価なききを導入している。また、従業員は若い人間が多く、ITへの苦手感は薄そう。

2012年の本だが、かっこの中に補足が書かれていて2000年代前半を思い出すようなちょっと古いタイプのオタクっぽい文章。もう9年も前の本だから恐らく現状はかなり進歩していて、最近のクラウド電子カルテとかはもうここに書かれている当時の問題は発生しなさそう。そもそもスマホの普及でITリテラシーが底上げされていると思うし。でもこの本は電子カルテの歴史を現場視点で知れるいい資料だと思う。

2007年くらいはどの開業医も電子カルテに手を出さず興味も持っていなかった。これは電子カルテを導入すると診察に時間がかかって患者数が多いと回らなくなってしまうかららしい。時間がかかると思われていた主な原因は、電子カルテはシェーマを絵で描けなくて、シェーマをキーボードで打つのは大変と言われていたから。他にも電子カルテへの反発意見は、当時電子カルテを使いこなすにはパソコンに詳しいこととタイピングの高速化が必要だったこと。基本的に医師のITリテラシーを期待してはいけなかった。実際筆者のITリテラシーはあまり高くなさそうで、LANをRANとスペルミスしてる。

電子カルテを導入する事例を知りたくて読んだが、9年も前の本なので技術の進歩によって今となっては参考にならなさそうな記述も結構多め。特に4章。

電子カルテの構築で筆者が重視したのは各システムの連動性。電子カルテを選ぶならデジタルレントゲンやファイリングシステム、予約システムとの相性を確認せねばならない。また、電子カルテの操作感は重要で代務医もすぐ使いやすいものが望ましい。

紙カルテの不便要素は、カルテの出し入れに時間がかかること、どこにあるか分からなくなること、診療回数が増えると分厚くなること、検査結果をカルテに貼る時間が無駄、レセコンへの入力に時間がかかる、の5つ。これらの作業がつらくて事務の医療事務の新入社員が辞めがちという問題もあった。

クリニックの院長さん、思ったより医療以外の業務が多そう。よく考えたら開業医って看護師さんとか医療事務の人たちの雇用主でもあるか。今まで医学の経験を積んできた人間が突然経営者になるって、そりゃ医療コンサルが儲かるわけだ。

電子カルテを作るときはIT機器の操作に慣れてない層をターゲットとして作らなくてはいけなさそう。今はタブレット端末が優秀になったからタブレットでペン使って書き込む形式が当たり前のように期待されると思う。

院長視点のみでしか書かれてないけど、電子カルテ導入に反発するところの従業員視点の意見を見てみたい。人が辞めるにはそれ相応の理由があるとは思うし、電子カルテ導入のみがその理由になるとは思いにくい。例えば従業員の意見を聞き入れず導入を強行した、とか。あるかもしれん。あ、やっぱり「重要で同士のつまらないあつれきも原因だったようです」と書かれている。

音声入力機能とか、最近の電子カルテには付いているのだろうか。今だと実装もさほど難しくなさそう。打ち込み作業に難があるなら今だとOCRとかの画像認識が有効な選択肢になりそう。

電子カルテにプログラムミスがありました」ってセリフ、笑ってしまった。大きなバグで医院が経営破綻してそれまで通院していた患者さんが別の遠い病院に行かなくてはいけなくなり、悪化して死んでしまうかもしれない。バグが人を殺す。このバグの内容を読んでみると、バグではなく設定ミスらしい。設定ミスのガードが実装されてなかったのは問題ではあるけども。しかし不具合を何でもかんでも開発者のせいみたいに言われてもなあ。

ずっと1stガンダムのセリフだったのに突然0083のデラーズ閣下が出てきた。

電子カルテを"台"でカウントし、原価は数万円〜10万円ちょっと、と言っているのはさすがに解せない。そういえば2012年くらいはまだソフトウェアにお金を出すことに一般の理解がなかった時代だったかもしれない。

ミスが命取りの仕事だから、確認作業の重要性が高い。この確認作業も自動でサジェストされるともっと効率化になりそう。たぶん既に実装されてるんだろうけど。

この人大きめサイズのペンタブへの文句がすごいな。親でも殺されたのか。怒りたいから怒っているだけのよう感じる。あと文句言ったあとに免罪符のように「ワコムのペンタブは世界一」って言っておけば許されると思ってるのはなんか炎上ネット民っぽい。第6章は特に酷い。

ちょっと強い言葉を使うと筆者から「僕は頑張った。悪いのは環境とメーカーと他の奴らだ。僕は正しい。」というような被害者ヅラを感じる