総理通訳の外国語勉強法 / 中川浩一

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読んでいて感じた感想等の放流。

感想

「外国語は誰でもできる!」みたいに言ってるけどさすがに慶應→外務省の人間が言うと説得力なさすぎる。金銭的に恵まれ頭の良い人間を見すぎて下の人間の存在が頭に無いのだと思う。

欧米の人たちは自分の言語にプライド持ってて外国語を素直に受け入れないってイメージ、確かにある。侵略の歴史があった国は特にそうだと聞く。この点日本人は外国語を話すことに対する嫌悪感は全くないと言っても良い。

一定期間内に語学を学習せざるを得ない立場にいて、緊張しながら練習する機会も与えられた人間、そりゃ身につくよって感じ。仕事でその言語を使わない人間はこういう状況を作り出すことが出来ない。

この本、簡単に言うと「スピーキングファーストで勉強しようね」って話。これは私の中国語学習の実感としても正しいと感じている。中国語学習は中国語会話の授業から始めたのだけど、この授業のおかげでかなり話せるようになった。スピーキングができると総合的な能力も高くなったと感じることができて楽しい。と言っても中国語は漢字を使うからリーディングは多少簡単だけど。もちろんスピーキングの前には文法知識の学習と単語の暗記が必須だけど。

スピーキング能力を上げるとリスニング能力もシナジーで上がる。 TOEFL対策の面談で言われたやつだ。英語、もう少しスピーキング能力上げるかー。

自己紹介とか挨拶とか、使いそうな文章を予め「自己発信ノート」に書いて口に落ち着けておくってやつ、アメリカ就活で似たようなこと散々やったなあ。小手先感は否めなかったけれども。あのときは今の3倍くらい英語話せてた気がするし、やっぱ必死に英語を使う機会って大事だよなあ。でも、やっぱりこの「自分の状況を踏まえて文章を予め作っておく」ってスピーキングでは大事やな。TOEFLでもこれよく言われてるし。いやよく考えたらこれってまんまTOEFLスピーキングやん。うーん、中国語でもやってみよ。熟語とか入れたいなあ。

そういえば、中国語はスピーキングばっかりやってたので口が単語を覚えていて全然書けない。話せるけど書けないって、言語としては正しいよなあ。読み書きは高等スキルだし。

ぼんやりと「語学を学習すること」について書かれた本。あまり学習の参考になるようなものではない。マトモに学習している人なら元から分かっている内容で、そうでない人は読んでもイマイチピンと来ないのではないかと思う。

シリコンバレーワークショップで同時通訳の人の通訳を聞けたの、かなりいい経験だったかもしれない。

「心臓に毛が生えている」という表現が出てきたけど、米原万里を意識してるのかもしれない。米原さんもそうだけど、同時通訳者って熱い人間が多いのかもしれない。

最後に日本の異文化理解が英語に偏っていることを懸念しているけど、これは本当にそうだと思う。国際理解として多様性について腕を伸ばさねばならないはずなのに画一化されている。

たったひとつの冴えたやりかた / ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 朝倉久志訳

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読みながら書いた感想等の放流

感想

大学の図書館で司書さんがカップル(人間ではない)に3冊の本をおすすめして、その内容が全3話として書かれている。翻訳がちょっと残念。

「第一話、たったひとつの冴えたやりかた」勇気ある女の子のお話。コーティは宇宙を夢見る女の子で、15歳の誕生日に父親が買ってくれたスペースクーパーでこっそり旅に出る。しかし船内で移動中のコールドスリープ中に微細な脳寄生体がコーティの頭に住み着いてしまう。この寄生体の名前はシロベーンで、冒険をしたくて母性を出てきた若い寄生体。この寄生体はイーアという種族で、知性を持ち他種族を宿主としてその宿主の頭に住む。寄生した最初はまだ知能はないが本能的に脳の方に進み脳で成長してその脳を借りて知性を発達させる。

イーアにはヒューマンの戦争のような争いはないと書かれているけど、これは技術を持たないイーアは代わりに心から発達しているのかもしれない。ニュータイプみたいに他人を理解し合う、感じ合う心を持っているから争いが起きない。

イーアドロンの場合はドロンに意思がないからイーアが完全に制御していたが、意思を持つヒューマンにイーアが入ると2つの意識が同化しそう。最後はもうほぼ同化してたんじゃないかなと思う。

そういえばアトムも最後は爆弾を持って太陽に突っ込んだな。

「第二話、グッドナイツ、スイートハーツ」大戦期の英雄がお仕事する話。カウボーイビバップみたいな雰囲気。始めの方は情景が全然想像できなかった。アメコミもそうだけど、アメリカのSFって説明少なすぎじゃない?

ぼくが一番電子カルテをうまく使えるんだ! / 内藤孝司

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読んでる時に書いた感想を若干まとめたものの放流。

医療用語全然知らないけど文脈からも類推できなかった単語はレセコン、シェーマ、シュライバーの3つしかなかったので医療知識の少なさは読む妨げにならなかった。

感想

名古屋の近くにある、来院者は1日平均180-200人の耳鼻咽喉科医院の院長さんの本。設備投資への理解はあって開院後に電話予約装置や高価なききを導入している。また、従業員は若い人間が多く、ITへの苦手感は薄そう。

2012年の本だが、かっこの中に補足が書かれていて2000年代前半を思い出すようなちょっと古いタイプのオタクっぽい文章。もう9年も前の本だから恐らく現状はかなり進歩していて、最近のクラウド電子カルテとかはもうここに書かれている当時の問題は発生しなさそう。そもそもスマホの普及でITリテラシーが底上げされていると思うし。でもこの本は電子カルテの歴史を現場視点で知れるいい資料だと思う。

2007年くらいはどの開業医も電子カルテに手を出さず興味も持っていなかった。これは電子カルテを導入すると診察に時間がかかって患者数が多いと回らなくなってしまうかららしい。時間がかかると思われていた主な原因は、電子カルテはシェーマを絵で描けなくて、シェーマをキーボードで打つのは大変と言われていたから。他にも電子カルテへの反発意見は、当時電子カルテを使いこなすにはパソコンに詳しいこととタイピングの高速化が必要だったこと。基本的に医師のITリテラシーを期待してはいけなかった。実際筆者のITリテラシーはあまり高くなさそうで、LANをRANとスペルミスしてる。

電子カルテを導入する事例を知りたくて読んだが、9年も前の本なので技術の進歩によって今となっては参考にならなさそうな記述も結構多め。特に4章。

電子カルテの構築で筆者が重視したのは各システムの連動性。電子カルテを選ぶならデジタルレントゲンやファイリングシステム、予約システムとの相性を確認せねばならない。また、電子カルテの操作感は重要で代務医もすぐ使いやすいものが望ましい。

紙カルテの不便要素は、カルテの出し入れに時間がかかること、どこにあるか分からなくなること、診療回数が増えると分厚くなること、検査結果をカルテに貼る時間が無駄、レセコンへの入力に時間がかかる、の5つ。これらの作業がつらくて事務の医療事務の新入社員が辞めがちという問題もあった。

クリニックの院長さん、思ったより医療以外の業務が多そう。よく考えたら開業医って看護師さんとか医療事務の人たちの雇用主でもあるか。今まで医学の経験を積んできた人間が突然経営者になるって、そりゃ医療コンサルが儲かるわけだ。

電子カルテを作るときはIT機器の操作に慣れてない層をターゲットとして作らなくてはいけなさそう。今はタブレット端末が優秀になったからタブレットでペン使って書き込む形式が当たり前のように期待されると思う。

院長視点のみでしか書かれてないけど、電子カルテ導入に反発するところの従業員視点の意見を見てみたい。人が辞めるにはそれ相応の理由があるとは思うし、電子カルテ導入のみがその理由になるとは思いにくい。例えば従業員の意見を聞き入れず導入を強行した、とか。あるかもしれん。あ、やっぱり「重要で同士のつまらないあつれきも原因だったようです」と書かれている。

音声入力機能とか、最近の電子カルテには付いているのだろうか。今だと実装もさほど難しくなさそう。打ち込み作業に難があるなら今だとOCRとかの画像認識が有効な選択肢になりそう。

電子カルテにプログラムミスがありました」ってセリフ、笑ってしまった。大きなバグで医院が経営破綻してそれまで通院していた患者さんが別の遠い病院に行かなくてはいけなくなり、悪化して死んでしまうかもしれない。バグが人を殺す。このバグの内容を読んでみると、バグではなく設定ミスらしい。設定ミスのガードが実装されてなかったのは問題ではあるけども。しかし不具合を何でもかんでも開発者のせいみたいに言われてもなあ。

ずっと1stガンダムのセリフだったのに突然0083のデラーズ閣下が出てきた。

電子カルテを"台"でカウントし、原価は数万円〜10万円ちょっと、と言っているのはさすがに解せない。そういえば2012年くらいはまだソフトウェアにお金を出すことに一般の理解がなかった時代だったかもしれない。

ミスが命取りの仕事だから、確認作業の重要性が高い。この確認作業も自動でサジェストされるともっと効率化になりそう。たぶん既に実装されてるんだろうけど。

この人大きめサイズのペンタブへの文句がすごいな。親でも殺されたのか。怒りたいから怒っているだけのよう感じる。あと文句言ったあとに免罪符のように「ワコムのペンタブは世界一」って言っておけば許されると思ってるのはなんか炎上ネット民っぽい。第6章は特に酷い。

ちょっと強い言葉を使うと筆者から「僕は頑張った。悪いのは環境とメーカーと他の奴らだ。僕は正しい。」というような被害者ヅラを感じる

高校生のための経済学入門 / 小塩隆士

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読んでる時に書いた感想と内容の要約を読後ちょっとまとめたものの放流。

他の本の感想と比べて文量が多いことからこの分野への興味を感じる。

感想とまとめ

「何らかの制約の下で最適な行動を探す、これが経済学の発想です。」と冒頭にあるように、経済学は最適化問題と似ている。しかし現実の経済活動は複雑すぎてそのまま解析するのは難しい。だから純化して経済現象を一般化するというのが経済学の手法となる。また、個人単位の、月の収入以内で生活をしていく普通の家計のやりくりも経済学に含まれる。これを会社同士や国同士で石油を売買するなどのもっと大きなスケールで効率性を追求するというのが経済学が取り組む問題になる。

冒頭で「近ごろの若者は…」的な意見が散見される。「昔に比べると、大学に入学することはずいぶんやさしくなりました。」みたいに特に今の大学生にかなり不満を持っている様子。多分この人は優秀層と何の接点もない下層しか見えない層にいるんじゃないかな?というか、「最近の大学生は不真面目」という結論だけが欲しくて見たいものしか見えてないような印象。学生が不勤勉になっている事を言うなら学生だけを責めるのではなくその上の教育課程の言及は必須のはずなのだがそれもない。あと、大学生が勉強会しなくなった、というのはいつと比べているのかも不明。明治時代と比べてるのか?

市場原理は変動があっても需要と供給が一致する価格にバランスされる仕組みのこと。

消費者にお金がなくなって需要が大きく減ると企業もそれに合わせて価格を下げなければならず、これが社会全体に波及すると経済全体の物価水準が低下し、デフレという状態になる。

資源は欲しがっている人の元に自動的に分配される。これは企業間の競争で達成される。資源配分の効率性という点で市場メカニズムは有利。社会主義経済のような「みんな平等」な世界では効率的な資源配分はできない。つまり経済の仕組みは複雑で人間が全てを把握するのは不可能だから市場メカニズムの流れに任せるべき

市場メカニズムの企業同士の競争により、市民が自分自身の利益を追求することで社会全体が効率的に回るようになる。

市場に対して強制力を持つ上位の存在である政府の役割は市場メカニズムをうまく回すことと市場メカニズムで解決しない問題を解決すること。

企業が一番楽に需要と供給をコントロールするための手段が独占とカルテル。これらによって競争を機能させなくする。これを防ぐために公正取引員会という役所が独占禁止法を元に不公平な取引を取り締まる。ただ、現状独占状態の企業もこれから新規参入する企業と潜在的な競争をしていると言えるので、政府は市場への参入障壁を低くしたり外資企業の参入を認めたりすると競争が行われやすい状況になる。

政府が介入すべき問題には外部効果、公共財、情報の不完全性、費用逓減の4つがある。情報の不完全性について、例えば医療保険がある。医療保険を民間に任せて任意加入にすると不健康な人間しか加入しなくなり、1人あたりの保険料が高くなってしまう。これを防ぐために、政府が社会保険として医療保険の仕組みを作るべきである。

市場では解決できない問題に所得格差がある。市場で人々の能力が正しく評価されそれに応じた給与が支払われるようになるとどうしても格差が生じてしまうし、市場に任せたままではこの格差は広がる一方になる。ここで政府が高所得者から多く徴収し、所得の低かった人に生活保護などの形で再配分する。このようにして社会としての公平性が成り立っている。しかしここで、どの程度の公平性を政府が負わなければならないかという問題が生じる。この問題への対処には何を基準として社会全体が幸福であるかについての基準が必要になる。この基準は大きく2つであり、社会にどれだけ貧乏人がいても全体の所得の総額が高ければ高いほど幸福であるという考え(功利主義)と、所得の低い人の幸せが社会全体の幸せの度合いの尺度となる考えである。富の再配分と言われると脊髄反射共産主義を思い浮かべ日本とは違うことのような印象を受けてしまうが、よく考えたら生活保護とかは再配分だった。主義者にはならず効率性と実利によるバランスが大事。

実際、競争による効率性と分配による公平性の両立は不可能で、どちらをどれくらいのバランスで折り合わせれば最適であるかという問いに対する解答はない。結局社会は人間の群れなので「そういう風潮だよね」な感覚的な多数決で決まる。

社会が不況で企業が採用を絞ると労働需要が低くなる。しかし人間は仕事をしてお金を稼がないと生きていけないので需要は高いままの状態になってしまう。政府はこれを解決するために公共事業などで雇用機会を創出したり景気回復のため税率を下げ購買を推進したりする。このような政策は景気対策と呼ばれる。このようなバランスするのに時間がかかかる大きな問題に対して政府の役割を示すのがマクロ経済学である。

マクロ経済学ミクロ経済学の考えをベースにしたもので、具体的な問題に対するアプローチを考えるのに役立つ。

「景気が良くなる」状態とは、消費者の所得が増えてたくさんものを買い、企業がたくさんものを生産して売っている状態のこと。「所得が増える」「たくさん売れる」「たくさん生産する」の3つは密接に影響しあっており、これらは同じものを別の角度から見たものにすぎない。

実際に景気(経済)の大きさはGDPで測るため、GDP景気動向を調べる基本的な指標になる。景気は良い時と悪い時で循環するが、その基本的な原因需要と供給のバランスが崩れること。

インフレが毎年続くと予想される状況だと消費者が「今買わなければ値上がりする」と判断するために需要が高まり、実際に将来の値上がりが確実なものになってしまう。更にこれに伴って企業では従業員の賃上げ要求が起こりやすく、更に企業は価格を引き上げる。この悪循環をインフレスパイラルという。インフレが進むとお金で買えるものの数が少なくなるためお金の価値が下がる。日銀などの中央銀行は物価を安定させてインフレやデフレを防ぐための仕事をしている。

多くの税金を使って教育や公共事業などの行政サービスを充実させる政府を大きな政府、行政サービスの拡充を追求しない政府を小さな政府という。1980年以降、先進国で大きな政府の弊害が大きくなってきたため大きな政府は問題視されている。政府は企業と違って多少赤字が出てもすぐには潰れないので効率性を向上させる要因が少ない。大衆は行政サービスは維持運営に大きな負担が必要であることに目を向けず拡充を求める傾向にある。そして政治家もこれに大衆の意向に従って行政サービスの拡大を主張する。これが大衆迎合主義(ポピュリズム)であり、ポピュリズムが一般的になると財政が常に悪い状態になってしまう。ポピュリズムが発生する原因は行財政の複雑化にあって、サービスの享受とそのために発生する負担の関係性が見えなくなってしまっていることが原因。これによって大衆ウケのよい主張が幅を利かすことになる。特に大きな政府だとこの問題が顕著化しやすい。

大きな政府と小さな政府のバランスの最適解は無く、現実の働きから計算して悪いところを改善していくしか無い。

国債は政府の借金だが、国民にとっては資産となる。しかし国民が国債の将来性を危ぶんだ結果国債の買い手が付かったり国債を一気に売ったりすると国債の価値がなくなってしまう。これを財政破綻という。

民主主義は現在税金を納わめている世代の多数意見を反映するため、将来世代の意見を反映しない。だから将来世代の負担が重くなり続ける。これだと少子高齢化社会は下の世代の負担が増え続けていつか破綻してしまう。

イラストでわかるDockerとKubernetes

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はじめにの1行目から誤字あるのはちょっと笑う。全体を通して結構日本語のミスがある。担当どうした。

全体的な感想

みかかの人が書いた非常に分かりやすい良い本。薄くて繰り返し読みやすい。Webインフラに関わるのであれば何回も読んだほうがいい。

1章 コンテナ技術の概要

コンテナとは何か、が仮想マシンとの比較で書かれている。

2章 Dockerの概要

dockerコマンドの基本的な使い方とレイヤー構造について分かりやすく説明してある。Dockerの使い方以上のことがメインで書かれている数少ない資料。

docker saveコマンドでコンテナイメージをtarボールで保存し、レイヤーごとに中身を紹介していたので分かりやすい。

3章 Kubernetesの概要

k8sの構成要素についてざっくりと説明してある。実際にk8sを使い始める前に頭に入れておけば慣れるまでの時間が短くなりそう。

他も紹介されてるけど主要そうな印象を受けた機能たち↓

  • Pod
  • Deployment
  • StatefulSet
  • Service

4章 コンテナランタイムとコンテナ標準仕様の概要

containerdとかruncの話。今あまり必要としていないのでサラッと読み流した。何かの折にもう一度読み返す。

悪意 / 東野圭吾

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読みながら書いた感想を読後ちょっとまとめたもの。

ミステリーのあらすじ・感想って難しい。

あらすじ

主な登場人物は元教師の野々口、売れっ子小説家の日高、そして野々口の元同僚で現在は刑事の加賀。物語は野々口の書いた手記と加賀の視点の2通りから進んでいく。日高は自身の書いた小説を野々口に盗作され、その恨みで日高を殺したと主張する。しかし捜査を進めていくにつれて野々口の書いた手記に疑問を持った加賀の調査により本当の真実が明らかになる。

感想

読みながら感想を書いていたが、ストーリーが二転三転するため書いた感想がことごとく使い物にならなくなってしまった。読んだ感想は、平日に一気読みしてしまうほどとにかく面白かった。読む前に前評判として東野圭吾全盛期の傑作、ということだけは知っていたのだが、確かに伏線を回収する展開や人物描写の緻密さがとても優れているように思った。物語は野々口が書いた手記の部分と刑事である加賀の2つの視点で進んでいく。手記の部分は手記らしく書き手の感情の起伏が少なく淡々と書かれていき、事件の動機が明らかになると共に少しずつ登場人物の内面が暴かれていく

ちなみに時代背景は2000年前後。文中に出てくるリダイヤルとかカセットテープとかフロッピーディスクとか、今の小学生が見ても何も分からなさそう。スマホどころかインターネットの一般普及より前なので、今と比べると情報に対する扱いが丁寧な気がする。今は誰でも手軽に素早く情報にアクセスできる時代。情報戦であるミステリー小説において最近を舞台としたものはスマホとかインターネットの仕組みをよく知っていないと書くのが難しくなっているのかもしれない。

最後の展開は本当に騙された。書かれていた手記が全部嘘で、小説中で起きた本当のことが書かれていないのは予想できなかった。完全に操られてしまった。最後に全て納得の形でひっくり返るのはすごい。

タイトルとなっている「悪意」はやはり物語の鍵となるものだった。最初は悪意というタイトルなのできっと文中にも登場人物の悪意を示すような描写が出てくるだろうと思っていて、実際冒頭の猫の話は分かりやすく日高の悪意を示すものだと思っていた。しかし、確かにこれは悪意を示す文章ではあったが日高の悪意ではなくて野々口の悪意であったというのは面白かった。

結論としては野々口は殺人犯でありながら盗作をした日高の被害者という立場を得ようとして手記もトリックもでっちあげられたものだった。実際にどうだったかは本人から語られずに加賀の断定的な宣言があるだけだが、最終的に加賀は「とにかく気に食わないから、気に食わない」という悪意から野々口が日高を殺したのだと結論づけている。野々口は過去に理由なき悪意を受けたと加賀の調査で書かれているが、理由なき悪意を受けた人間は他人にもそれを強いてしまうものなのかもしれない

入門 Kubernetes

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k8sについて全然知識がなかったのでとりあえず読んだ。実務で使う前にもう一回サラッと読んでもよさそう。k8sクラスタ上で動くシステムの概形を掴んでいればあとはコマンドを覚えるだけだからそれは実際に使う時に使えるようになればよいはず。

全体的な感想

k8sの概要をザッと知りたい時に便利だと思う。結構細かいコマンドが書かれているのである程度k8sを使ったことある人間にも身になることが多そう。しかしこの本の原著が書かれたのが2017年で結構時間が経っているので、意図したように動かないコマンドが多かった。手を動かしながら学ぶには別のネット上にあるリソースを使うほうがよい。

1章 Kubernetes 入門

コンテナとk8sの核となるコンセプトはイミュータブル、宣言的設定、オンラインで自己回復するシステムの3つ。

インフラのイミュータブル性とは、一度システムで成果物を作成したらユーザーの更新があっても成果物が変更されないこと。変更をする際は全く新しいイメージで行う。これに対してミュータブルな更新とは、例えばサーバー上でapt updateを走らせてミドルウェア等を更新してしまうこと。イミュータブルであることにより、変更ログを置いやすかったりエラー時のロールバックが楽だったりするという利点がある。抽象化されて書かれているけどつまりDockerコンテナが本番環境で動いているとデプロイや運用が楽だよねって話。

そして宣言的設定により状態を定義することでイミュータブルなインフラを構築できる。Dockerfileでコンテナの状態を定義したら本番環境のコンテナの状態も明確に分かるようになって嬉しいよねって話。

自己回復するシステムはそのままの意味で、例えばクラスタ中に必ず3つのレプリカが起動している状態でなければならないと設定した場合には1つを手動で立てて4つにした時に自動で1つ削除されて3つの安定した状態に戻ること。

k8sはマイクロサービスの構築を容易にする仕組みをたくさん持っている。k8sは分離アーキテクチャを重視しており、これはサーバーをAPIで分離すること。複数のAPIでアプリケーションを構築するとチームも小さく保つことができて組織においてもスケールしやすくなる。k8sを使うとアプリケーションとSREの関心を分離することができる。

3章 Kubernetes クラスタのデプロイ

チュートリアル形式だと思っていたけど全然違った。初めての人間はチュートリアル形式にしないと何も分からないのでは?知ってる人間が知ってる人間に説明している様相になっている。

正直分かりにくいので何か別のリソースを参照する必要がある。

5章 Pod

Podはコンテナとストレージの集まりのことで、k8sクラスタではコンテナではなくPodが最小のデプロイ単位。

この章は実際にWordPressk8sクラスタ上に構築するチュートリアルとかやれば難なく理解できそう。

8章 ReplicaSet

この章もチュートリアルで手を動かしながらやったほうがよさそうだけど重要そうだったのでメモ。

ReplicaSetはPodの冗長性を確保できるもので、複数の同じPodを管理することができる。

12章 Deployment

DeploymentはReplicaSetを管理する。Deploymentによってローリングアップデートの設定ができる。