2022年4月読んだ本

漫画、小説、技術書。漫画は全巻読んだものか新刊を買ったもののみ。中途半端に読んだものは含めていない。

  • [漫画] それでも町は廻っている
  • [漫画] 転生したら剣でした (11)
  • [技術書] 内部構造から学ぶPostgreSQL 設計・運用計画の鉄則
  • [漫画] 33歳独身女騎士隊長。第151〜156話
  • [漫画] JKハルは異世界で娼婦になった5巻
  • [漫画] タコピーの原罪 下
  • [漫画] メスガキのいる喫茶店1
  • [小説] 滔々と紅
  • [小説] ぼくのすきなせんせい
  • [小説] 小隊
  • [漫画] 初恋、ざらり
  • [小説] 藻屑蟹
  • [小説] プラナリア
  • [技術書] 失敗から学ぶRDBの正しい歩き方

[漫画] それでも町は廻っている

良かった。台詞回しが好きなものが多い。小学生コンビの恋愛模様が一番の見どころかもしれない。アプリで読んだから手元に残ってないけど読み返したくなったらKindle版買うかもしれない。

[技術書] 内部構造から学ぶPostgreSQL 設計・運用計画の鉄則

ある程度運用経験のある人向けの本。説明不足が多い。マテビュそのものの説明はあるけど具体的なユースケースにはほとんど触れられていなくて分かりにくい。バキュームなど、突然初出の単語が出てきて知ってること前提で進む。

ドキュメントをそのまま日本語にしただけのような本。細かいことだけ説明されても仕方ないし、細かすぎて運用で役に立つ知識は少ない。PostgreSQLクローンを作ろうとするときには役立つかもしれないけど、実運用上で役立つ知識は少ない。

パフォーマンスチューニングとかボトルネック調査とかそういう即物的なものは書かれていない。

また、重要な部分は太字、とか強調がないのも分かりにくさを助長している

重要そうな部分だけを概要や一般的な説明、実用例などを含めて説明してくれていたら良本だったのになあ。

第8章はいいかも?具体的なユースケースはもっと欲しいのだけど。

そもそもRDSなんかのクラウドサービスからpostgres使う場合はあまり意識することないことが多い。

[漫画] 33歳独身女騎士隊長。第151〜156話

細々と続いてくれているアホくさ激おもろ漫画。今回の話は起承転結で言うと起の部分っぽい。「ドスケベ・ザ・エッチセックス空間」の語感が良すぎて仕方ない。

[漫画] タコピーの原罪 下

話題作、完結。例に漏れず私もジャンプ+で毎週読んでいた。

これほどまで毎週鬱展開を持ってくることができるのか、とウキウキしながら読んでいた。ジャンプ+は1話ごとにコメントも読めて面白いよね。邪悪なドラえもんって言われてるの笑った。

話の途中で登場人物が誰も幸せにならないのがいい。でも最後はみんなが"ハッピー"になる終わり方をしていて読後感は良かった。正直全てが最悪になる胸糞エンドでも良かったけど。

結局東くんはしずかちゃんと知り合わない方がベストで、最後に3人仲良くハッピーエンドじゃなかったというのがとても良かった。このエンドはかなり評価が高い。

[漫画] メスガキのいる喫茶店1

中野ブロードウェイの本屋で見つけてその時はスルーしたんだけどどうしても記憶に残ってしまい帰ってからKindleで買ってしまった。タイトル見た時クスッとしてしまった。

[小説] 滔々と紅

asmsuechan.hatenablog.com

[小説] ぼくのすきなせんせい

大藪春彦新人賞を受賞した短編。本当に短かった。

家出した主人公が怪しい男の車で函館まで送ってもらう話。主人公は女かと思ったら男だし怪しい男は殺人犯疑惑あるしで、終始不穏な空気。いつ何が起きてもおかしくない緊張感があった。

[小説] 小隊

asmsuechan.hatenablog.com

[漫画] 初恋、ざらり

結局ラストは幸せに結ばれて終わり、というのは作者が自分の理想や願望を描いたのかな。それはそれでいいと思っている。

似た構成のアスペルカノジョとは違いかなり健常者寄りに描かれている。作中に軽度であることは明言されていたが「発達障害持っていてもあなたと同じ人間です」を言いたい意図もあったのかな。

可哀想な女の人は母子家庭で母が水商売をしている、ってタコピーの原罪のしずかちゃんも同じ設定だったな。障害を持っていることと「可哀想である」ことは結びつけてはならないことのように言われがちだが、この作品では可哀想に見えるよう、理不尽に抗ったり苦労しているように見えるように描かれている。

[小説] 藻屑蟹

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[小説] プラナリア

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[技術書] 失敗から学ぶRDBの正しい歩き方

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まとめ

今月一番楽しめたのはそれ町かな。

技術書もう1冊読みたかった。ビジネス書も月に1冊は読みたい。

失敗から学ぶRDBの正しい歩き方 / 曽根 壮大

  • 著者: 曽根 壮大
  • 読了日: 2022/04/29
  • 出版日: 2019/02/27

読み返したい章

  • 2章: 失われた事実
  • 4章: 効かないINDEX
  • 5章: フラグの闇
  • 10章: 転んだ後のバックアップ
  • 16章: キャッシュ中毒

感想、まとめ

例が分かりやすくて想像しやすい。想定するレベルはDBを使った簡単なアプリケーションの構築経験+多少正規化などもしたことがある、という程度だと思う。「レプリケーション」「外部キー制約」とかの単語を聞いたことがある、というのが最低条件?

ただ、DB使ってWebアプリケーション作ったことある人だったらだいたい理解している内容だった。正規化はしようね、とか制約は使おうね、とか監視はしようね、とか。前提知識としてRDBを使った経験が求められていそうなのにも関わらずベストプラクティス的な、初歩を説明しているのでターゲットがイマイチ分からない。日頃RDB触っている人は言われずとも実践していそうだし、触ってない人は門前払いを食らいそうな内容だし。

ベストプラクティスを知り、ベストプラクティスに従う。が一番大事なこと。

以下読みながら書いたざっくりとしたまとめ。推敲なし。

1章

1章の例、想像できたり見に覚えがあったりする部分が多いのでよい(?)

一度雑な設計をしてしまうと割れ窓的にその設計が他でも使われ始めてそのうち身動きが取れなくなるからコツコツと直しながら進もうね、という話。

2章

要約 履歴が必要なデータかどうかの見極めはしっかりすべき。

「今ある事実のみを保存してしまうと過去の事実を失ってしまう」イミューダブルにデータを保存すると変更履歴が残って嬉しいよね。

履歴いらないと思って設計するとあとから履歴ほしいと思った時に無いものは無いので遅延レプリケーションやログをElasticsearchとかに投げるなどしておくと良い。

3章

各種JOINの説明の図、今まで見たものの中でもすごく分かりやすい。

JOINの処理は対象テーブルが増えれば増えるほど急激に重くなるけど、INDEXを貼れば軽くなる。

JOINのアルゴリズムには3種類あって、MySQLは1つしかサポートしてないけどPostgreSQLは他のアルゴリズムもサポートしている。そのためPostgreSQLは大きなテーブルのJOINや不等号を使ったJOINが得意。

マテビュ、自分で使ったことがまだない。ちょっと調べてみる。いやよく考えたら使ったことあった。

4章

実行計画、見たことない。

BTree INDEXを使った参照の仕組みが簡単に書かれている。分かりやすい。

INDEXは検索結果がテーブルの20%未満、対象テーブルが数万から数十万行と十分大きいこと、という条件でなければ使用されない。知らなかった。

条件句にも注意が必要。WHERE age*10 > 100ではINDEXが使われない、

age > 100/10なら使われる。へー。

こういうのもINDEXを使えるようにするため、PostgreSQLには式INDEXというものがある。

LIKE検索では前方一致(LIKE ‘hoge%’)でしかINDEXは使われない。後方一致したいのであれば保存時にreverse()をかけるなどの工夫が必要。

RDBMSは「今のデータ情報をサンプリングした統計情報」をもとにオプティマイザが判断しています。』p52

WHERE狙いのキー、ORDER BY狙いのキー、というスライドがいいらしい

5章

ブログ投稿システムがあるとする。ユーザーにも記事にも削除フラグが使われている。現在有効な記事一覧を出そうとするとuserをjoinして削除フラグを見て…みたいなことになる。更新時も削除フラグを変更して追加insertしていくタイプだとタイトルとユーザーIDのユニークキーは貼れなくなる。いろいろ問題がある。

うーん、イミュータブルな追記型設計だと確かにユニーク制約付けられないな。

案として削除テーブルを作る、が書いてある。これもなあ…

状態が削除だけならいいけど更新、予約、下書き、みたいに複数あるとまたややこしい。

うまい解決策は書いてなかった。

6章

ORDER BYは遅くなりがちだからソートする前にwhere使って対象を絞り込むとかした方がよい。

https://use-the-index-luke.com/ja

このサイトがちょくちょく話題に出るけど良さそう。

7章

IDの上二桁に意味をもたせる、医療系のマスタデータにありがちな仕様だな…(確かにifで先頭2桁とかの番号を見て種別を判別するコードがありがち)←公開しないように

あくまでIDじゃなくてコードならいいのか…?

似たようなデータでもテーブルは分けたほうがいいみたい

  • EAV
  • Polymorphic Association

8章

全部JSON型にしてしまうと、変更に対しての柔軟性は上がるが、検索しにくかったり更新しにくかったりする。

9章

強すぎる制約はよくない。早すぎる最適化になってしまうことがある。

データ型の独自定義はよく考えてからする必要がある。データ型の変更には強いロックが取られるため。

10章

バックアップの章。

論理バックアップ、物理バックアップ、PITRがある。

バックアップとっても障害時にあたふたするといけないから普段の素振りが大切。カオスエンジニアリングだ。

GitLabのデータ削除事故の話にも言及してある。

「本番と同様のステージングを定期的に作りなおす」なるほど。よさそう。

DBだけじゃなくてもファイルのバックアップでも同じことが言える。

プラナリア / 山本 文緒

  • 著者: 山本 文緒
  • 読了日: 2022/04/29
  • 出版日: 2005/09/10

あらすじ

「生まれ変わるならプラナリアになりたい」春香は23歳の頃乳がんで右胸を切除した。手術後は快復に向かい退院するが、それからも定期的に治療を続けなければならず体力的にも精神的にも辛い日々を過ごしていた。

恋人の豹介との仲も良好とは言えず病気や態度のことで度々衝突していた。

そんな時、入院中同じ病棟にいた永瀬と偶然再会し、彼女の下で働き始める。最初は何もかも自分と違う美人な永瀬に憧れのような気持ちを抱いていたが、それが徐々に春香のコンプレックスを刺激し身勝手な怒りとして顕れてしまう。

繊細でめんどくさい女性を高い解像度で描いた作品。

感想

登場人物の解像度が高い。感情の機微が見えるし、明文化されていない行動の背景を想像させられる。

主人公の春香はがんになったことで元々あったであろう「被害者でありたい」という欲求が満たされてしまう。

被害者であることにこだわってしまっているので、ある程度快復してもがん患者であることにしがみつこうとする。

他者が怖く、自分が傷つけられるのを怖がっているから被害者ヅラして予防線を貼張っているように見える。他人から見たら非常にめんどくさい。自分と向き合うことも怖がっているので他人から正論で踏み込まれるのも嫌がっている。「自分はがん患者という特別な立場を手に入れたはずなのに気付いたらそれも失って手元に何も残っていない」という状況に気付きたくない。

体型を理由に虐められていたけど長い間改善されなかったのも被害者であることの気持ち良さから抜き出したくないからなのではと思う。

病気のことを理解されたい気持ちと、理解してもらいたくない、特別だと思ってほしいという気持ちが相反している。

他の短編も自分が特別だと思いたい女が書かれていて面白かった。が、やっぱり5篇の中ではプラナリアが一番良かった。

藻屑蟹 / 赤松利市

  • 作者: 赤松利市
  • 読了日: 2022/04/23
  • 出版日: 2019/03/08

あらすじ

主人公はパチンコ屋の店長。

田舎のパチンコ屋で、このままだとこれ以上の出世は見込めないことが予想できて鬱々と日々を過ごしていた。そんな中原発事故が起こり、主人公の住む街に避難民が増えた。避難民は補償金で国から大金をもらっていて、自分たちの町にも羽振りがいい人が増えたことを感じていた。

主人公は彼らが働かずとも大金を手にしているという話を聞き、苛立ちや憤りを覚えていた。そんな時、工業高校の同級生で原発関連の仕事をしている純也から月50万円の仕事の話をもちかけられる。そして主人公は金欲しさにパチンコ屋を辞め、純也の話に乗ることにする。

作業場に赴き、そこで純也から任されたのはオヤジさんと呼ばれる過去30年原発作業員をやってきた老人の世話だった。純也はこのオヤジさんを使って1億を稼げるがその方法はまだ伝えられないと言う。

主人公は、本を借りたり釣りに出かけたりとオヤジさんと交流していくうちに鬱屈した気持ちが氷解していく。

だが純也が伝えられなかった1億円稼ぐ方法とは、オヤジさんを同意のもと自殺に見せかけて殺しその遺書で金を受け取ることだった。

そしてオヤジさんの意志のもと作業場近くの山に穴を掘り、穴の中に入ったオヤジさんに灯油を浴びてもらい火を付けた。大きく動揺する純也を尻目に主人公は1億円のネタであるオヤジさんの遺書を燃え盛る火に投げ込む。

この燃え盛る炎を最後に第一部は終わっている。この後は主人公が自首するところから始まり、さらに大きな流れに巻き込まれながら自分の願いと向き合い行動していく様が描かれている。

オヤジさんの遺書が燃えてしまいオヤジさんの死を利用して金を得るようなことがないと思っていたとき、純也からもっと大きな金を得られるかもしれないとの連絡が届く。

しかし純也は周囲を警戒する余り疑心暗鬼に囚われナイフで刺されて死亡する。そしてその後釜に入る形で今度は主人公が純也のポジションで除染作業員の職長として月500万円という大金を得る。

結局は金なのか、自分はオヤジさんと純也の命を金に変えただけなのでは、という葛藤が生まれ、最後は全てを捨てて逃げようとする。

感想

オヤジさんとの交流で憑き物が落ちたかのように金への執着がなくなった。というかむしろなにか憑いたと言ってもいいほどの豹変ぶり。純也も含めて、登場人物の印象が途中でガラッと変わって序盤と終盤では全く別人のよう。原発作業は人を変える、が言いたいのかな。

この作品あらすじ書くの難しかった。書きたいポイントが多くてうまくまとまらない。かと言って全部書くのはつらい。ノリユキ、関口、榊、マキなどの人物の話をあらすじにまとめようとするも断念。

オヤジさんとの出会いで金への執着が弱まったが、オヤジさんを殺してしまうことで死者だけじゃなくて金にも取り憑かれてしまった。取り憑かれる、というのをもう少し詳しく言うと本文中ではストレスという単語が使われていて、殺人に関わってしまうと一生そのストレスが解消されないとのこと。四六時中頭の片隅に殺した人間が浮かび付きまとわれている感覚。確かに「取り憑かれている」とはそういう状態なのかも。

ラストの、金から逃げようとする展開が少し雑な気がした。あの雰囲気であれば逃げられずバッドエンドを迎えそうなもの。いや、小説的に見れば雑だが現実的に見れば白黒つかない曖昧な感じは正しく思える。最後の丸投げ感が気になった。

最後が少し雑な以外はとても楽しめた。第1部が終わってそこから失速するかと思ったが、第2部からの新しい展開で更に勢い付けられた。第1部は蟹工船を読んでいるときと同じ気持ち、第2部はテロリストのパラソルを読んでいるときと同じ気持ち。第3部は…太宰治か?刃傷沙汰や夜遊びや自殺や金。このあたりから太宰治を思い出した。思い出しただけであって太宰治の作品を読んでる気持ちではないのかも。

小隊 / 砂川 文次

  • 発売: 2021/02/12
  • 読了: 2022/04/17

読んだ理由

戦争にまつわる話が好き。自衛官の友達が多く、等身大の自衛官を書いた作品であるとの評判を目にしたため。

あらすじ

北海道侵攻してきたロシア軍と対峙する陸上自衛官の姿をリアルに描いた作品。

初級幹部の安達は小隊長として前線に配置されたが、1ヶ月続く膠着状態や満足な物資がない山での生活に辟易していた。

そしていつ戦端が開かれるとも知れない膠着状態の中、じわりじわりと戦闘の気配が近寄ってくる。

いざ戦闘が始まり、与えられた役割に心を委ねることで恐怖心を抑え込み各分隊に命令し応戦していく。しかし兵力や情報の不足により状況は絶望的。小隊も次々と死傷者を出していく。

初めての戦闘に際した緊張、不安、高揚などが一自衛官の視点で解像度高く描かれている。

感想

ここまで自衛官を現場の立場で描いた作品はそうそうないように思う。人物描写、戦闘描写で言うと村上龍の「五分後の世界」が近しいが、この作品はもっと踏み込んだところまで描いている。

ストーリーは間延びせず、読みたい描写を的確に適度な長さでまとめていて非常に読み易い。

「現代の戦争は情報戦だ」という話もあるように、情報についても記述がある。しかしポジティブなものではなく、「情報がギリギリになって伝えられる」を筆頭としたネガティブなものであった。これは二次大戦の反省がなされずそのまま同じ過ちを繰り返している旧態依然とした自衛隊トップを描こうとしているのだと思う。ただ、現実の陸上自衛隊は実際にはもう少しマシになっていると予想している。

また、現場の自衛官に伝えられる情報は全体的にぼんやりしており、戦闘という具体的な出来事が起こるまでは何も確定していない宙ぶらりんの状態である。この宙ぶらりんの不安定さ、地に足つかなさをぬかるんだ山で満足な生活ができない不快感を描くことで増幅させているように思う。

物語の終わりでまとわりつく不快感の大元である泥が川で一気にすすがれる。これによって開放感や不安定から安定への状態の変化、確定を表現している。

滔々と紅 / 志坂圭

  • 作者: 志坂圭
  • 出版: 2017/02/24
  • 読了: 2022/04/14

読んだ理由

Kindle Unlimitedで読めた。遊郭の独特な文化が好き。郭言葉とか絢爛豪華な内装とか。

あらすじ

9歳の駒乃は飢饉により吉原の扇屋という大見世に八両二分で売られる。売られた当初は痩せぎすでカトンボと揶揄されるほどであったが、翡翠(かおとり)花魁の禿(かむろ)としてしのほという名前で数年を過ごす。

12歳になり、生来の勝ち気な性格から楼主から素養を見出されたしのほは引込として囲われ読み書き・芸事習い事の稽古が付けられるようになる。その後、14歳になり名を明春(あきはる)とし新造出しを迎えた。

吉原の全焼などの事件はあるも稽古事をこなしつつ暮らし、明春は16歳になった。16歳で水揚げが行われるが、その場でも客の歯を折るという事件を起こす。水揚げ後は張見世に出るようになったのだが、客の歯を追った事件や将棋で客を打ち負かし髷を切った事件などが話題となって少しずつ客を増やしていく。

ある日、翡翠花魁に身請けの話が持ち上がる。身請けにより空いた序列を埋めるのだが、明春は先輩女郎を追い越して花魁となる。明春は花魁となったことでまた名前が代わり、二代目艶粧(たおやぎ)を襲名した。このときなつめという禿を抱えることになった。なつめは素直な性格で、地獄と呼ばれる吉原の中でも懸命に働いていた。

そんな中、藤七郎という客が登楼し艶粧がついた。この客はキリシタンであった。なつめは藤七郎からキリスト教の話を聞き、極楽に憧れを持ち信仰を持つようになった。しかしある夜、いつまでも振り続ける艶粧に怒った侍が扇屋に乗り込んできて、なつめを刺し殺してしまう。なつめは寺で供養されたものの、最期にパライソ(キリスト教の極楽)に行きたいと願っていた。この願いを叶えるため艶粧は死後もお授けができるという長崎のキリシタンに希望を持つ。

そして江戸の医者の息子である林太郎から長崎にいる医者に弟子入りする折、夫婦となり一緒に来てほしいと迫られ、足抜けしを決意し共に長崎へ向かう。このとき駒乃は23歳。無事長崎まで到着し、林太郎は医学の勉強、駒乃は畑仕事や読み書き・三味線を子供に教えながら暮らし始める。そして駒乃は死後のお授けができる長崎のキリシタンを見つけ、なつめのお授けをしてもらった。

それから子を為し親子3人で暮らしていたが、労咳によって32歳でこの世を去る。(917文字)

感想

テーマにも関わらず悲壮感、薄暗さ、陰鬱さはあまり感じなかった。むしろ粛々と流れていく時間に抗えず身を任せている様子が感じられて、「滔々と」とはそういう意味も含んでいるんだなと感じた。

足抜け未遂や姉女郎や禿の死などがあるものの、変わりそうで変わらない生活。籠の中の鳥として大きな流れに流されるまま滔々と過ごすことになる。

ただ、滔々とした中にも変化はあり、それはなつめの死によりもたらされた。死の前後で主人公駒乃の性格は変わり、なつめの死後はそれまでの勝ち気な性格は鳴りを潜め、どこか陰のある性格へと変化した。

このまま陰りを湛えたまま日々を過ごすのかと思いきや、長崎になつめの救いがあると知り、更に長崎に行く話を持ちかけられて行動に起こす。これは自分で切り拓く類の行動のようにも思えるが、よく考えると偶然に客2人から流れてきた話に乗っかって運良く目的地にたどり着けた、という様子でしかない。

主人公は現代的な考えをしがちで、これにより感情移入がしやすくなっていると思われる。確かに読みやすく、2日で読み終わった。

個人的にはもっと陰鬱な話を期待していて、籠の中の鳥が籠から逃げ出してみたらそこには少し大きな籠が広がっているだけだった、みたいな話だとか籠から逃げ出すこともできず羽も足ももがれて苦しみながら生きながらえる、みたいな話が好き。遊郭をテーマにしているにしてはドロドロした内面描写が少ないように思えた。

まあでも面白かった。

就職したので学生時代を振り返る

博士前期課程を修了し長かった学生生活が終わってようやく新入社員として働き始めました。

会社員になるまで、大学入学で東京に出てきてから結構いろいろ活動していたので、これを期にこの7年間を思い出しながら学生生活の振り返りをしようかなと思います。

1. やったこと

  • プログラム書いた
  • 研究した
  • 学会発表した
  • 休学した
  • 英語を勉強した
  • 中国語を勉強した
  • 本を読んだ
  • プレゼンをした
  • フリーランスやった

1.1 プログラム書いた

趣味実務問わずよくプログラムを書いていました。

3ヶ月以上関わったのは合計10社とかでしょうか。並行して同時に複数社でコード書きがちだったので結構ありますね。短期はいくつなのかあんまり覚えてません。一番長いのは吉田真吾さん id:yoshidashingo のいるCYDAS社の2年4ヶ月でした。長々とお世話になりました。

結構分野を問わずいろいろと動くものを作って楽しんだと思います。マジメに取り組んだのは低レイヤ(CTFとか)、Web、ロボット、機械学習の4分野でしょうか。うーん、浅く広い!本当は低レイヤが一番好きです。全然分からないけど。ハンドルネームのasmsuechanのasm部分の由来はアセンブリです。

そういえばプログラミングとの出会いは中学時代で、授業中に16進ダンプしたバイナリをプリントアウトして読んで遊んでいました。

個人ではいろいろWebアプリ作ってリリースしたりスマホアプリ作ってみたりライブラリを書いてみたりと気ままにやってました。その中でもBoostnoteのコミッターやってた時が一番楽しかったかもしれません。

1.2 研究した

修士では移動ロボットの研究をし、工学修士の学位をもらいました。ロボットと言ってもロボットのかなり上のレイヤーのソフトウェア側です。ROSというミドルウェアを使ってパッケージやらを作ります。

具体的な研究内容は複数のロボット同士の通信をうまく仲介するネットワークシステムの開発でした。スイッチとかルーターのロボット版みたいなやつ。

少し技術の細かい話をすると、こいつはOSSで公開されていて全部以下のオーガナイゼーションにいます。具体的な技術だとTypeScriptとSocket.IOでサーバー側書いてTerraform管理されたFargateにリリースし、PythonとROSでロボット側を作り、PythonとかTypeScriptとかKotlinでSDKを作りました。ロゴも作った。

この研究では学会で賞取ったりSaaS版リリースしてみたりと、割と熱中して開発してました。研究室内では後輩たちがしばらくこのシステムをこすり続けてくれるみたいです。なんなら私はまだ次の学会の共著に入っているので最近も後輩の研究を手伝っています。

研究していく中で得られたものは技術的なものよりも「批判的思考力」「ペラペラ喋る力」「考えを文章にまとめて伝える力」が大きかったです。おかげでだいぶ地に足ついて物事に取り組めるようになりました。これらはだいたい指導教員との雑談の中で身につけました。正直研究分野の細かい話よりもよっぽど重要なものを身につけることができたと思っています。

研究室活動の一環でいろいろものを作って自由にやらせてもらってすごく楽しかったです。

qiita.com

moriokalab.com

3年間いた自席。スマホCLANNADをモニターに映してやってる時の画像しかなかった。智代アフターもやりました。クドわふたー楽しみ。

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1.3 学会発表した

発表5回(うち査読付き国際会議2本)、査読落ち2回。回数の問題ではないのですが、ロボット工学の分野では修士の期間で5回だと平均かちょっと多いくらいかでしょうか。毎回自分の頭の悪さに辟易しながら論文を書いていました。

あと後輩くんたちの共著を3-4本した気がします。いろいろ手伝っていたので数えていません。

査読なし国内学会ですが賞を貰ったのはいい思い出です。

moriokalab.com

1.4 休学した

休学してアメリカでしばらく活動していました。帰国後はしばらく福岡の実家に引きこもっていたのですが、この時期は自分を見つめ直すいい時期だったと思います。この時期にふと「大学院へ進学しよう」と思い立ちました。引きこもり期間中はアメリカ就活失敗の悔しさをバネに英語やコンピューターサイエンスの勉強をずっとしていました。院試対策もしてたので人生で一番勉強した時期だと思います。楽しかった。

asmsuechan.hatenablog.com

1.5 英語を勉強した

全然大したこと無いレベルなのですが英語の勉強を継続的にしていました。TOEFLは90点。うーん100点欲しかった。

ちゃんと英語を使う機会がないとある程度で限界が来ますね。またどこかで海外チャレンジをしたいです。

1.6 中国語を勉強した

まずは英語だろ!というのは置いておいて中国語も結構勉強しました。喋るのは好きです。中国人が周りに多くて環境はとてもよかったです。HSKの5級を持っています。この前6級を受けました。点数はまだ分かりません。発音が良いみたいで色んな中国人に驚かれる。嬉しい。

1.7 本を読んだ

新旧洋邦古今東西いろんな本を読みました。

1.8 プレゼンをした

過去の資料やconnpass等でざっくり数えると、LTなどの軽いものから学会発表などの重いものまで合計80回くらいプレゼン発表をしたみたいです。だいぶ喋るスキルは身についたと思います。ペラペラ喋ります。

1.9 フリーランスをした

個人事業主(フリーランス)としてプログラムを書く仕事をしました。学生のうちにやっといて良かったと思っています。たぶんもうやりません。

2. 学年ごとのサマリー

思い出しながら書きます。

2.1 学部1年

徹夜でアセンブリ書いたりCTFしたり低レイヤ周りで遊んだり。学科にプログラム書いたことある同級生がいなくて驚いた。この頃はケーキ屋でバイトしてたり陸上やってたり軽音サークルでドラム叩いてたり一般大学生っぽかった。春休みにRuby on Railsに触れてそっからWebの世界に入る。

2.2 学部2年

開発インターンを始める。他にもいろいろ開発のバイトをする。夜間にデッサンとか習うデザインの学校に通う。

Web開発に自信ニキだった。いわゆるダニングクルーガー効果。

リクルート主催のシリコンバレーワークショップに参加する。これに通ったのは正直奇跡で、参加が人生の転機になった。その時のクソつよ人類達とは未だに連絡を取り合ってる。

2.3 学部3年

クラウドワークスインターンを始める。1年間とても楽しかった。当時の社員さんたちとはまだ交流がある。みんな強くていい人たち。他にもいろいろな会社で並行してコードを書いていた。この時期ストレスで倒れた。ウケる。

2.4 休学

アメリカ就活をする。帰国して実家に引きこもり英語とコンピューターサイエンスの勉強を半年程する。月1回TOEIC受ける時しか外に出ない生活だった。1日中本を読むだけの生活を2ヶ月程する。よく覚えてないけどこの期間に100冊以上読んだ気がする。Boostnoteの開発が一番盛り上がった時期である。この前Boostnoteの横溝さんが当時を振り返って「あの時末ちゃんマジでずっと引きこもっててすごかった」と言っていた。

2.5 学部4年

復学。院試の勉強。第一志望の大学院に落ちる。悲しい。中国語の勉強。研究室HPの開発。アリババクラウドMVP卒論。

2.6 修士1年

月の売上が結構あったので税金面を考え4月に個人事業主として開業。いわゆるフリーランス。家賃光熱費生活費等を自分で払うようになった。

6月に初めての学会発表。12月学会で賞とった。授業やら学会やらカンファレンスやらいろいろ取り組んでて、ヤベえ忙しい時は1ヶ月で8回重めのプレゼン発表があるというトチ狂った状態だった。これに追加で2社分の稼働もあったので、5時寝8時起きの3時間睡眠で生活して1本1500円のバカ高ユンケルくんでしのいでいた(当時のツイート。ヤバい)。人生で一番忙しかった気がする。プレゼン発表に関しては自分が大変なだけで他所への責任は一切無かったのでまあまあ楽しかった。

ちょっと大きめのカンファレンス(≠学会)にプロポーザル投げたら通ったので発表した。

2.7 修士2年

コロナ。目指していた学会の査読に落ちる。悲しい。予定されていた上海交通大学への留学が中止。悲しい。6月就活開始。8月内定。ありがとう通年採用。機械学習にハマる。コンペでメダルを獲る。他には趣味でSaaS作ったりジョブキューシステム作ったりした。コロナで大学にもあんまり行けなかったし割とゆるい一年だった。

3. (やりたかったけど)やれなかったこと

3.1 起業

めちゃくちゃ色んな人に「起業しないの?」って聞かれました。そういうタイプっぽいのでしょう。いろいろ考えて動いた時期もあるのですがやはり一人じゃ無理でした。

3.2 留学

残念ながらコロナで中止。留学は学生のうちにやってみたかったですね。

5. まとめ

修士までしか行ってないし学歴という点では7年は長い方ではないのですが、年月としてやっぱり7年は長い。

そういえば英語と中国語を結構学んできましたが見事に英語も中国語も使わない環境で働いています。ウケる。素振りが上手い野球部員(万年ベンチ)みたいな。

どこかしらで載せた気もするけど、小学校の卒業文集に書いた将来の夢。超天才ではないがだいたい叶ったぞ。

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もうじき26歳になります。たぶん私はプログラミングを始めた13年前とあまり変わっていません。というわけでほしい物リストです。お願いします。

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