言語学者、外の世界へ羽ばたく / 川原繁人

  • 読了日: 2022/06/16
  • 出版日: 2022/04/28

まとめ

ポケモン言語学を研究している先生が書いた本。内容は授業の話、ヒップホップの話、他者との繋がりの話、ポケモン言語学の話、統計・機械学習の話など多岐にわたっており、冒頭も書かれているように「私的な視点から書いた」本になっている。

話題が多岐にわたっているので言語学を知っている人しか分からないようなことはないのだが、その代わりに読むには研究活動を始めとした研究者としての背景知識が必要になってくる。大学院で真面目に研究をしていたことのある人であれば著者の言っている内容はよく理解できるだろうし、自分はこうして院生時代が過去のものとなった今ではなく修士の現役時代に読みたかった本だと感じる。

内容は https://la-kentei.com/kotoba_news/?category=7 この辺りの記事や著者の授業をまとめたものとなっていて、オープンになっている部分が多い。

例: YouTubeチャンネル: 川原繁人の音声学入門(基礎編)

本書では繰り返し「制約は創造の母である」というフレーズが著者の実体験と共に書かれていて、特にコロナ禍での研究・教育活動の創意工夫が強調されている。

言語学的な話でも気になる内容はいくつかあって、例えば「日本語は英語より優れている」のように言語に優劣をつけるようなラベリングをするとその話者に対する差別につながる、など読んでいて確かになと思った。

感想

この先生の授業を受けているような感覚になる本だった。普段学生を教えているというのもあって、読者との距離が近いような印象。いい先生なんだろうな、って。一度話してみたくもある。

新しい分野を開拓していく様子が描かれているのがとても面白く、真面目で堅苦しいよりも冗談が分ったりユーモアがあったりする方が魅力的に見えるんだろうな、との思いを抱いた。今現在切り拓かれている分野の研究は本当に楽しそう。

自分は日本語を含んだ自然言語が好きであって言語学は今まで全然触れてこなかったが、ランダムフォレストなど知ってるデータ分析手法が出てきてこういう分野にこそ自分みたいな人間が突っ込んでいくと楽しいのかもしれないと少し思った。